One Hot Summer Day

夏の始まり、イヤってくらいに晴れている。レストランの中心にそびえるやたら大きな木、幾度と過ぎた夏とともに刻まれた年輪。焼けた肌に、無造作のカーリーヘア、いかにもユダヤ人らしい顔立ち。道を挟んだ隣で同じ年くらいの男の子が、トランペットとともにボサノヴァを唄っていた。

木漏れ日が差すテラス席、艶やかなブロンドの髪が光を反射する。ぽってりとした唇が悩ましそうに、最近知り合ったバンドマンについて語る。正直どうでもいい。今日は、何も食べてないらしい。食欲が無いのは、恋をしてるからなのかなって。サングリアを飲もうか迷っている。でも、今日まだ何も食べてないし、まだ昼の1時だから今飲み始めたらヤバいかなって。

正直どうでもいいって思った。優しくなれなかった。この国に来てから、人の優しさを疑う事を知った。そして、世の中に溢れた表面的な優しさを思い知らされた。でも、何よりも、自分に対して優しく無かったのかもしれない。暑さで向こう側が歪んで見える中、肩肘を張って背筋を伸ばしていた。少しでも脇を緩めたら、きっと崩れてしまう。暑さで全てが溶けてしまって、自分も溶けてしまう。海からの緩やかな風と一緒に、消えてしまいそうなほど繊細なボサノヴァだけが聞こえる。